Godspeed You! Black Emperor@恵比寿リキッドルーム

至福の一時間五十分。至高の一時間五十分。

2010年に活動を再開し、昨年突如新作アルバム「Allelujah! Don't Bend! Ascend!」をリリースして国内外を湧かせた伝説のポストロックバンドGodspeed You! Black Emperorが二年ぶりに来日! ということで行って来ました。



以下レポートのような感想。
19:00ぐらいに会場入りしたけど、その頃はまだガラガラだった。でも開演10分ぐらいになってハコは殆どパンパンに。平日のど真ん中なのに人が集まるところにこのバンドの人気を再認識。そして当然のことながら物販はCDしかない。反商業主義を貫いてるバンドなので。FUGAZIと同じくTシャツなんて勝手に自分で作れ!っていうアレですな。
開演数分前からズズズッと重低音がフロアに鳴り響く。あぁ、そろそろなんだなと。確か19時32分頃に客電が落ちてメンバーが登場。八人の大所帯である。もうオーケストラといってもいいのかもしれない。楽器を手に取り徐々に各人が音を持続させるように鳴らしていく。フロアを音で埋め尽くすように。一曲目は熱心なファンなら知っている「Hope Drone」から。どのアルバムにも収録されていないけど、OPでは定番の一曲。そして裏の16mmフィルムを用いて映しだされたHOPEの文字。

GY!BEならやっぱりこれだよな!っていう。よく世界各地で突如鳴り出す終末の音なんかがあったりしますが、彼らのこれはあくまで希望を根ざした音だろう、と。
そうして持続音のハーモニクスが15分ほど続き、飽和点に達した所で昨年リリースされた「Allelujah! Don't Bend! Ascend!」より「Mladic」へと流れるようにプレイ。この曲は元々Albanianという曲名で再始動する前からプレイされていたのですが、晴れて初音源化された経緯があります。
まるで羽音のようにバラバラにノイズのような音が鳴らされ、やがて金物のような音へと収束されていく。そしてダイナミックなリフとリズムをを皮切りに中近東系メロディというかエスニックともいえるメロディが溢れ出す。もうこのメロディとフックには抗いようも無いですね・・・w もう少しハコが大きければ体を揺らして踊ってもいいレベル。確かこの時は体感的に音源よりもテンポが早かったようにも感じましたね。そして終盤。叩きつけるように繰り返されるメロディックなフレーズ。もうね、これはヤバいwとてもじゃないが文章では説明しきれんw そして最後の最後にはマーチングドラムのようにドラムを打ち鳴らし、フレーズを音源よりもタメにタメまくって大爆発!!
僕は歩兵でいい!!(©伊藤セーソク)
これには完全に打ちのめされたし、この時点でチケットの元は取れたような気がする。ここまでで30分。そんな満足感に浸っていながらもライブはまだ続きます。
そして静かにヴァイオリンの調べが聴こえ出す。「Lift your skinny fists like antennas to heaven」からの「World Police And Friendly Fire」だったと思う。よくその前にセットで「Chart#3」もやるのだけれどこの日はやらなかったような? まぁ、それはいいとして。裏のスクリーンには油田地帯が燃え盛ってるような映像が。この曲のタイトルも皮肉とユーモアが入り交じっていて面白いですよね。とても悲し気なメロディが流れるなか、徐々にリズムが加速を始める。引っ掻くようなヴァイオリンの音色や、ブルータルなパーカッションとドラムも印象的。ここで45分が経過。
すると大地を揺るがすが如くドラムとパーカッションがフロアを押しつぶす様に鳴り響く。最近ライブで披露されるようになった未発表新曲の「Behemoth」をプレイ。ここでもまた中近東系のメロディが流れ出す。しかしこれはあまりにもヘヴィ過ぎる。ここまでドローンリフを押し出しているのは彼らの曲の中ではそんなにないと思う。そう、ブラック・サバスようなドゥームリフとエスニックミュージックの邂逅ともいうべきサウンド
閑話休題。この新曲がプレイされるようになってからは、3rdアルバムの「Yanqui U.X.O.」から殆どプレイされていないのですよ。どういう理由なのかはわからないのですが、曲が長いというのも多分にあるけど、インストロックで反戦・反権力を謳うことに限界を感じたのかな?とも捉えています。あのアルバムはまさにそれがテーマだったわけだし。そもそもの活動休止理由がそんな感じだったかな・・・? そういえば「Allelujah! Don't Bend! Ascend!」のアルバムクレジットの下の方に記載されている“FUCK LE PLAN NORD. FUCK LA LOI 78. MONTREAL RIGHT NOW FOREVER.”という声明文に似た一節に気づいたリスナーはどれだけ居るんでしょうか。そしてそれについて何か思った方はどれくらい居るのでしょうか。どちらもGY!BEの地元のカナダのモントリオールに於ける政治問題なわけなのですが。片や労働と資源の問題、もう片方は学生の抗議デモを取り締まるトンデモ法(これはひどい・・・) 常に自分達のみならずグローバルな視野で未来を見据えてきた彼ら。自らの地元が権力に脅かされることにきっと我慢ならなかったんだろうなぁ。と。ここまではっきりとクソ食らえ!的な文を載せるということは、そうとうな憤りを感じたのでしょう。これには彼らの変わらない政治スタンスに敬意を表しておきたいです。
よし、話を戻そう・・・w 中近東系ライクなメロディが終わりを告げ、アンビエント・ドローンなパートに突入。

画像のようにシンバルをスティックで擦り付けるようにして波紋を広げていました。足元のエフェクターでノイズを出してる人も居たかも。そして何人かはステージ袖で休憩タイムw ここのパートが長いと感じる人もいたようですが、僕的にはそこまで長く感じなかったですね。これには観客が普段からドローンミュージックに重きを於いてるかで大分印象が別れますね。個人的にはむしろこのタメがあるから後半が引き立つのでは?、と。また何人かがステージに戻っていき、冒頭の「Hope Drone」のように持続音を重ねていく。そしてパーカッション&ドラムも加わって大きなアンサンブルと化す。だんだんと終盤の盛り上がりへと向かっていくこのジワジワ感。タマラン・・・w リズム隊も弦楽器隊も熱を上げていき、ギターのトレモロピッキングのハーモニーが会場に響き渡る!うわー、素晴らしい!これも抗い難し!終盤で彼らが作り出したアンサンブルの巨大な渦に吸い込まれるように呑まれてしまった・・・ 自分でもクッセー文章書いてんなwと思うけど、本当にそう思ってるんだから仕方ないでしょ!www えっと、ここで90分が経過。そう、Behemothは45分近くある大曲なのでした。
ラストは「Slow Riot For New Zero Kanada EP」より「BBF3」(Blaise Bailey Finnegan IIIの略)で締め。触りの部分で同EPの「Moya」のイントロをやったような気もするが記憶は定かでない。裏のスクリーンにはデモ隊の行進の様子が映し出されていた。儚いメロディからダイナミックなインストロックへと変貌を遂げるこの曲。映像のデモ行進と歩調を合わせるようにドラムとパーカッションも力強く打ち鳴らされる。その後スッと静寂が訪れ、ピアノの調べが聴こえ出す。今日のショウ全体をビシっと締めるためにメンバー全員熱が入っていたようにも思う。終盤のヴァイオリンの音色もグレイト!の一言。
ダダダダダダダン!ダダダダダダダン!
BBF3が終わった。それと同時にノイズがフロアを覆っていく。残響が無情に響く中、メンバーは早々に感謝を表して去っていった。このEPのタイトルのSLOW RIOT=静かな暴動(直訳だとゆっくりとした暴動だけど、こういうニュアンスで読み取ってくれ頼む)とは上手いこと言ったもので、音楽を言葉で介さない代わりに最高のロックを作り上げて意思を表現する彼らに感服。ここで一時間五十分のショウが終了。完璧なライブだった。もうそれしか言い様がないですね!!
終わってからPA裏の16mmフィルムの映写機を発見。


2台だけなのかと思ったら4台もあったとは・・・ ここも日本人ではなく、カナダの専任のスタッフの方が映してたっぽいですね。
年明けから何度かライブに足を運んでますが、これも年間ベスト級のライブだったかと。というかGY!BEはいつだって最高なんだよ!! 最後はこの文で締めてみよう。
Slow Riot For New Zero Thirteen Japan!!