インポッシブル

かのスマトラ島沖地震を題材にした映画、「インポッシブル」を見て来ました。ポスト311以降地震を扱った映画は非常にデリケートな話題のため、提供&配給を決めたプレシディオに感謝。
この地震は、ヘヴィーミュージック好きにはグラインドコアバンドNasumの故ミエツコ・タラーツィクが被害にあって亡くなったことでも知られてますね・・・ 主演は薄幸女優として更に磨きがかかったナオミ・ワッツユアン・マクレガー。以下あらすじと感想とか。

  • あらすじ

2004年12月24日。ヘンリー(ユアン・マクレガー)とマリア(ナオミ・ワッツ)と三人の男の子(ルーカス、トマス、サイモン)を含む五人のごく普通のイギリス人家族は、ヘンリーの仕事の都合で日本に滞在していた。そんなヘンリーの家族は冬のバカンスを過ごすため、タイのカオラックのビーチへ訪れていた。この上ないスイートなホテルで最高のクリスマスを過ごす一行。珊瑚礁が見えるくらい澄み切った海で泳ぎも楽しむ一行。この後にとてつもない悲劇が訪れるとも知らずに・・・
明けて翌日の12月26日。屋外プールで佇んでいたヘンリーたちは異変に気づく。突風と地震で鳥達が騒ぎ始めている・・・ ふとビーチの方を目をやると木々がなぎ倒され何かが迫ってくる・・・!
「ルーカス!!」
咄嗟にマリアは叫んだ!だが時は既に遅し。そう、大津波がホテルごと飲み込んでしまったのだ・・・ 散り散りになる家族。濁流に流されながらも辛うじて生き延びたマリアとルーカス。しかしマリアは目を覆うほどの大怪我(これが本当に酷い・・・)を足に抱えていて、まだ9〜10歳ぐらいのルーカスがなんとか怪我を負った母を助けを呼ぼうと試みていた。言葉は通じないもののどうにか地元住民に助けられた二人。強引にだが病院に搬送してくれたことについて、マリアはただただ泣きじゃくりながら「ありがとう・・・ありがとう・・・」と言葉を繰り返す。ほぼ野戦病院化した病院にいる二人は、ヘンリーを含む三人が気がかりで仕方なかった――。
一方離れ離れになっていたはずのヘンリーは、トマスとサイモンの息子二人を含めなんとか無事だった。ヘンリーは息子二人を信用出来る家族に預け、マリアとルーカスの捜索を続けていた。絶望的な状況の中でも懸命に宛も無い病院や避難所を回るヘンリー。果たして家族は再開できるのか?

  • 感想

泣いた。ただただ泣いた。
いやもうコレ題材からして反則でしょう。とりわけ311を体感した私達にとっては決して他人ごとでは無いはずです。津波って「アッ・・・」と気づいた時にはもう遅いのですが、あの思わず目を背けたくなる大津波が襲ってくるシーンといったらもう・・・ その後にマリアとルーカスが再会するシーンで、ルーカスが「独りにしないで!」と叫んだところで思わず泣いてしまった。
やはりというかこの映画の評価を決定づけているのはマリア役のナオミ・ワッツの体当たり演技だと思う。津波に巻き込まれて濁流に流されるシーンの撮影で気管支炎を患ったそうなので、相当過酷だったんだなぁ、と。そしてアレですよ、「マルホランド・ドライブ」以来の画面いっぱいに泣きじゃくる顔が映し出されるシーンがインパクト大でしたね。元々薄幸な顔の女優だったけれど、更に磨きがかかっていたようにも思う。
ところでルーカスがマリアの怪我(&ポロリ)について指摘するシーンがあるのですが、そこでルーカスが「・・・見てられない」と呟いたところは見に来た観客も同じだったんではないでしょうか。本当にエグくてうわっ・・・と声を漏らすところでした。
そういった痛みや破壊描写、現場の惨状までをも残酷に観客に伝える描写は何とも言い難いですね・・・ 我々も実際に経験してはいるのですが。
またユアン・マクレガーもいつの間にか立派なお父さんキャラを演じきってましたね。家族を捜索中にやや不器用なきらい(不用意に怪我したり、人目をはばからず泣き崩れたり)を見せるのですが、それもまた父としての責務を懸命に果たそうとしている様に感じて心揺さぶられました。
どんな絶望的な状況でも生きる希望を捨ててはいけない、そう痛感させてくれました。エンドロール中に場内からすすり泣く声が響いていた辺りでこの映画の評価を決定づけているでしょう。個人的にも暫定ながら今年のベスト映画だと思ってます。本当に見て良かった。