ゼロ・ダーク・サーティ

かの「ハート・ロッカー」で世界中を沸かせたキャスリン・ビグロー監督最新作。今回は全世界を震撼させたビンラディン暗殺までの謎に包まれた経緯を描く!
ということで見て来ました。

  • あらすじ

2011年5月1日、全世界に衝撃が走る。アメリカ本土同時多発テロ事件の首謀者であるウサマ・ビンラディンが暗殺された――。
そのビンラディンを追い詰めたCIAの追跡チームの中核を担っていたのが、マヤ(ジェシカ・チャステイン)という女性分析官だった。
ところ変わって2003年。パキスタンのCIA支局へ配属されたマヤは即座にチームに加わり、ブラックサイト(秘密施設)にてアンマルという捕虜の尋問に立ち会っていた。尋問とはほぼ建前のようで、実際に目の当たりにしたそれは殆ど拷問のようだった。(度重なる暴行、水責め、箱詰めなどなど)何度となく尋問が繰り返され最初は目を背けていたマヤだったが、後に何の躊躇もなく自身も尋問に加わる様になる。
一年後サウジアラビアで外国人を狙ったテロが起きる。そしてアンマルからとうとう「アブ・アフメド」というビンラディンの部下であり、連絡係でもある名前を引き出すことに成功。しかしこれは干し草の山から針を探すに等しいことの幕開けでもあった・・・
度重なる尋問と分析に没頭し過ぎたマヤは相当に疲弊していた。証言を聞き出せても上司からは「証拠不十分だ!」と一蹴される始末。同僚に気分転換に誘われたホテルではあろうことか爆破テロ事件が勃発。(2008年9月20日イスラマバード・マリオット・ホテル爆破テロ事件)改めて敵陣の中にいることを再認識することになる・・・
ジョージ・ブッシュ大統領が任期満了に伴いオバマ大統領に変わった頃、大統領は拷問撤廃を発表。悪名高いアブグレイブ刑務所での虐待もしくは虐待と大差ない拷問が世界中に明るみになり、非難が集中したためだ。情報ルートを失い手詰まりになるかと思われたが、バラウィというビンラディンの掛り付けの医師とコンタクトを取ることにに成功。大金と引き換えならビンラディンを裏切るという口実のバラウィ。マヤと親しくしていた同僚がアフガニスタンのCIA基地にてバラウィと接触することになっていた。しかし友人は帰って来なかった。ビンラディンに手の内を明かされていたのだろうか、バラウィは自爆テロを起こしCIA局員を含む七名を殺害。(2009年12月30日アフガニスタン・チャップマンCIA基地爆破テロ事件)更に「アブ・アフメドは埋葬された」という情報が追い打ちをかける。マヤは放心状態になってしまった。あまりのことで何も考えられない。果たしてこれからどうすれば・・・? 慰める同僚を尻目に復讐にも似た使命感を背負うマヤ。
幾つかの時が過ぎた頃。何としてでもビンラディンを見つけ出して殺さなければならない!そう決意したマヤに朗報が。情報を洗い直した結果、「アブ・アフメド」はまだ存命だったのだ。好機と見たマヤは上司に脅迫に似た言動でチームをよこせと詰め寄る。流石の上司も唖然。その後、マヤのチームは漸く「アブ・アフメド」が出入りする豪邸を発見。恐らくジェロニモビンラディンの暗号名)もそこに居る可能性が高いと踏むマヤ。CIA本部の報告会議で作戦の詰めに入るが、イマイチ確証が得られないと言い出すCIA長官。しかしマヤは長官相手だろうと強気の姿勢を隠さず100%そこに居ると言い出す。
2011年5月1日、作戦決行。作戦名オペレーション・ネプチューン・スピア。作戦内容はジェロニモ暗殺及び、現場での情報回収。世界最強部隊ネイビーシールズ・チーム・シックスが出動。時はゼロ・ダーク・サーティ=0030。(午前0時30分。軍専門用語)マヤにとって運命の瞬間が始まる――。

  • 感想

これはもう凄い映画を作ってしまったなと。こないだ見たジャンゴ同様158分もあって相当長い映画なのですが、30分に一度衝撃的なシーンを挿入して飽きさせない作りになってます。起伏を重視しているおかげでダレずに見れましたね。
昨年に同じCIA職員の事件を題材にしたアルゴが有りましたが、あちらがエンターテイメント性を重視した作りに対してこちらはとにかくリアリズム重視というか。これについていろいろ論争がありましたがそれは置いといて。※僕はどちらの映画も好きですが。
まずなんといってもラストのビンラディンが潜伏中の豪邸への潜入突撃シーンでしょう。実際に任務に当たった兵士のインタビューを元に構成されているそうですが、あまりにリアル過ぎる。三ヶ月かけて作ったらしい豪邸のセットを本物と同様に忠実に再現。これがドアの細部まで入念に作られていると知って驚愕。この豪邸セットにシールズが突入しますが、その兵士も装備一式が全て実際の出来事と一緒という念の入れよう。ナイトビジョンゴーグルを装着しているシールズが隊列を組んでドアを爆破→突入の流れがホントにかっこいい! ところでこのシーン、とことん光を排除して本当に暗いまんまです。リアリティを追求するためにそこまでするか!っていうw
そしてもうひとつは主役のジェシカ・チャステインの演技力ですね。ひたすらに感情を押し殺したような役なのですが、ふとした時に見せる目つきや言動がとても印象的でしたね。特に長官に「誰だ、この女は?」と言われた時の返し方といったらもうw あれはミシェル・ロドリゲスみたいな「チンポの無い兄貴」ですよ、ホントにw もしくは女帝監督のキャスリン・ビグローをそのまま投影したようにも思えます。
それと、10年という歳月は人を変えていくんだなぁとも思いました。最初は冷静に見えたマヤも同僚の死をキッカケに、他の同僚や上官に対して言動が強めになっていくのがこれまた印象的。ネタバレになるのであまり細かく書きませんが、ラストでマヤが輸送機に乗るシーンを見て、人生の内の10年以上をビンラディン発見殺害に捧げてきた彼女はこれからどうするんだろう?とふと考えてしまいました。あまりにも深い闇にのめり込んでしまったというか。
凄く個人的な趣向なのですが、マーク・ストロングが出ていてちょっと嬉しかったり。去年見た裏切りのサーカスに続いて、またしても眉間にシワがよった渋い顔しながら渋い演技してて面白かったなどw
そして今作、単なるプロパガンダ映画というわけではないんですよね。光の部分(ビンラディン暗殺)があれば、闇の部分(拷問虐待シーン)もあるという。この辺に妥協したりしないのは監督の強気な性格なんでしょうね。
この映画はそれなりに面白いですがそれでもやっぱり人を選ぶと思います。FPSゲーム好きorミリオタor軍事オタorサバゲオタは見に行った方がいいですね。
追伸:ステルス型ブラックホークって本当に存在するのか・・・?